Annさんに会い、一層色鉛筆とアートに惹かれた。翌1999年、シアトルで開催された第7回CPSAアメリカ色鉛筆アート展覧会へ行き、会場で行なわれていたワークショップを見学することができた。
一人のアーティストがスライドを使い、描き方の工程を紹介していた。曰く「下絵を描いた後、色を塗る前に、グレーを使って色の濃淡を作っている、いわばデッサンをしている」と。目から鱗が落ちた。なるほど、色彩を作るよりも、まず光と陰を観察し、立体感を作ればいいのか!
小学生の図工の時間にアジサイの絵を描いたことがあった。葉の形をギザギザに描くと、「葉っぱの輪郭線を丸く描いている子がいるけれど、伊久多さんはよく観察しているね」と先生に褒められた。
モノの形状はその頃から私の目に入っていた。でも大人になっても、光によって色彩が濃くなったり薄くなったりすることを、意識しては見ていなかった。第7回CPSA展覧会を訪れ、応募して選ばれなかった私の風景画には奥行きが感じられないことに気づくことができた。
ワークショップでアーティストがお勧めしていた画用紙『Stonehenge』と、Annさんに教えてもらった色鉛筆『Prismacolor』をシアトルの画材店で購入した。
その後バンクーバーからナイアガラまで、グレイハウンドバスを乗り継ぎカナダ横断の旅をした。オタワの青空市場に並んだ彩り豊かなパプリカは、光が当たりツヤツヤに輝いていた。このパプリカの光沢感を描きたいと思った。
帰国後、会社勤めの傍ら描画に熱中した。画用紙に描いた下絵にグレーで濃淡を作ると、パプリカが立体的に浮き出ているように見えた。嬉しかった。
色を重ねると色が混ざった。立体感のあるツヤツヤのパプリカができた。本当に嬉しかった。絵を描くことがとても楽しくなった。
Annさんも、ワークショップで講義をしてたアーティストさん達も言っていた。「モチーフにする写真は参考でしかない。カメラの眼は一つ。人の眼は二つ。写実画を描きたいなら、写真に映ったものをそのまま丸写しして描いてはいけないよ。」
絵に興味を持つ前に、私は一眼レフカメラに興味を持っていた。意識して見ると、実際の色と写真に印刷された色とは違うことが分かる。それにカメラレンズに近い物ほど、形は大きく引き伸ばされて映る。片目を閉じて見るとそれが分かる。
カメラが捉えた物の形は、両目で見る現実の形とは異なっている。
絵を描き始めたことで、見ているようで見ていないことが多いことに改めて気づいた。オタワで見たパプリカの絵を時間をかけて描き、念願の展覧会入選の夢が叶った。
Home-grown Peppers
【2001年第9回CPSA展覧会入選】
