Susanさんから返事が届いた数ヶ月後、もう一人のアーティストから返事が届いた。
アメリカの住所に送ったAnn James Masseyさんへの手紙は現住所のあるパリへ転送され、それゆえ返事が遅くなったと詫びて丁寧に質問に答えてくれていた。
そして「もしもパリへ来ることがあればいつでも私の原画を見に来て良いよ」と書いてある。感激した。絶対に行きたいと思った。厚かましいけれど本当に原画を見に行って構わないかとAnnさんへ連絡をすると、時間を取ってくれると返信が来た。
写実的で細かな色鉛筆アート作品を描くアーティストさんたちに対して少し厳格な人柄のイメージを勝手に抱いていたが、SusanさんもAnnさんも、とても明るく朗らかで優しい人だった。
見ず知らずの私にAnnさんはいろんなことを教えてくれただけでなく、お気に入りのパリの場所を案内してくれた。Annさんと2人でパリの地下鉄に乗った時に車内の空調が効いておらず、お土産で持っていった扇子を早速取り出し前にいる乗客へも Fresh air!と言ってあおいであげていた光景を、今でも鮮明に覚えている。
アーティストそれぞれ好みの画用紙があることや、色鉛筆には油性と水性があることも、Annさんが教えてくれた。水性色鉛筆が日本で一時ブームになったことがあり水に溶ける色鉛筆の存在は知っていたが、油性の色鉛筆があることは知らなかった。
今はネットを開けばたいていの物は買える。けれど、アメリカの色鉛筆アーティストさんたちが愛用しているという油性色鉛筆を手に入れるのは当時は簡単ではなかった。いくつかの画材店を巡りやっと見つけた記憶がある。
『Prismacolor』として販売されているそのアメリカ製の油性色鉛筆は、取扱い会社変更によって以前は『Eagle』 や『Berol』の名前で売られていたらしい。Annさんがくれた何本かの色鉛筆に、それらの名前が刻まれている。
日本ではベステックという代理店が、アメリカから『Prismacolor』の芯を取り寄せ製造加工し『カリスマカラー』として販売していたが、2024年12月末で製造終了になった。カリスマカラーの品質に近い製品『DesArt COLOR/デザートカラー』が新発売になる旨、ベステックのサイトに掲載されている。
今では画材店の棚にわかりやすく分類された「油性色鉛筆」と「水性色鉛筆」が一本ずつ単品で購入できるようになっている。
『アメリカの色鉛筆アート』に載っていた写実的な絵画作品が描ける色鉛筆は、『Prismacolor』以外にも多種ある。パリへ行った5年後に、そのことを知ることとなった。