2025-03-01

2.CPSA色鉛筆アート展覧会 1998

 手紙を送り数ヶ月後、Susan Avishaiさんから返事が届いた。画集に載るほどのアーティストが返事を書いてくれることを、期待はせずに、でも待ち望んでいた。でも本当に届くとは思っていなかった。憧れのスーパースターから返事が届き泣くほど嬉しかった。

Susanさんの手紙には、「アメリカには色鉛筆協会があり毎年開催される展覧会に行けば原画を見ることができる」と書かれてあった。画集に載っていたSusanさんの作品は、チェック柄のシャツを来た男性の絵とベルベット生地の上着を着た女性の絵で、それぞれ衣類のシワや質感にとても魅力を感じた。その旨を手紙に書いたと思う。

あなたも絵を描くの?と質問を添え、メールアドレスを書いてくれていた。およそ十年後に日本へ来たSusanさんと会うことができた時、改めてその時の礼を伝えた。

Susanさんは衣類の素材が好きらしい。人が着ている服を見ると、この色は色鉛筆のあの色とあの色を重ねると作れる、など考えてしまうと話していた。Susanさんと会った頃は本格的に絵を描き始めていたため、Susanさんの色彩への興味に共感した。

Susanさんから返事が届いた当時、私が勤めていた会社ではオフコンからパソコンへ切り替えが始まり、取引先のシステム担当者がほぼ毎日のように来て、事務員たちに一から操作方法を指導してくれていた。

私はそれを機に家にパソコンを購入した。机に置いた大きなデスクトップのパソコンで、インターネットを接続することもできるようになった。2026年にサービスが終了するらしいADSL回線の更に前の、「ダイアルアップ回線」が当時のネット通信の主流で、電話回線を使った時間によって課金されるため、必要な時に必要なことだけを検索した。

そしてアメリカ色鉛筆協会について調べ、ワシントンD.C.で開かれる『第6回CPSA色鉛筆アート展覧会』へ行くため、アメリカ旅行を計画した。

ワシントンの空港に着き、税関で入国目的を聞かれた時、誇らしげに「色鉛筆アートの展覧会を見に行く」と答えた。税関職員は「色鉛筆の?」と少し馬鹿にしたように笑い、何日滞在するのかと聞いてきた。3日間と答えると、色鉛筆の絵を見るためにわざわざ来たの〜?とその女性は声を上げて笑い出した。ムカついた。作品を見たこともないくせにと腹が立った。

でも確かに、たかが"色鉛筆"の絵を見るためだけにこんなことをしてていいのかと現実思考が噛みついてきた。けれど、警察官になる夢がなくなり、色鉛筆アートの原画を見ることが夢になり仕事をしてお金を貯めて来ているんだ。私の夢を馬鹿にする権利は誰にもない。

展覧会の会場へ着くと、受付にいた一人の女性が"Thank you for coming."と言って出展作品のリストと次回の展覧会の出展要項を渡してくれた。

額装された作品一枚一枚をまじまじと眺めた。正面から斜めから、また正面から絵を眺め、色鉛筆の線の跡を見ると、筆圧が強く塗られていることがわかった。色鉛筆を強く塗る考えはなかった。なるほどそうか。

展示してある全ての絵を見終わり、手に持っていた出展要項を読んだ。この展覧会に選ばれたい。大きな夢ができた。