前世?
以前目にした前世占いの本で、私の前世はドイツの職人と書いてあった。確かにドイツが好きだし、たまたま見たテレビのドイツ語講座に瞬時に惹かれたし、何かしら否定できないものがあるかもしれない。
好きな映画の一つ『Before Sunrise』で、Ethan Hawke演じる主人公のJesseが輪廻転生について語っている。
我々全員が、何らかの形で人類の始まりに起源を持つのであれば、今の僕たちの魂はどこから来たんだろう?って思うんだ。
だって1万年前の地球の人口は100万人、100万年前の人口はわずか5万人だった。今、地球の人口は50億から60億の間。これは、100万年の間に、魂が1万分の1に分裂したことを意味するんだ。
僕たちは、一個の魂のほんの一部に過ぎないことになる。だから、みんな散漫した訳の分からない気分になるのかな?僕がこんなわけの分からないことを考えることも、理に適っているんだろうけどね。
輪廻転生の考えでは、人だけでなく命あるものは何度も繰返し転生するという。
けれど、初めてこの宇宙に命が誕生してから現在に至るまで、生物の個体数は増え続け、人口の数だけで80億、全動物の数は数えられない。
もしも魂が何度も何度も転生を繰り返すのであれば、Jesseの言うように、一つの魂が分裂し続けているのだろうか。あるいは、この世に対して未練のある魂たちが新しく誕生した動物に乗移り(いわゆる転生?)、満足できなければ他の個体へ移動し、人生二度目三度目という人ができるのか。
結局のところ、輪廻転生が事実かどうか誰にも分からない。肯定も否定もできない。
血は受け継がれ、ゲノムは変化する
ただ事実として、私たち人はみんな、先祖代々だけでなく、先祖が食べた動物の血液や細胞のゲノムを受け継いでいる。
あるいは、感染したであろう細菌のゲノムを、少なからず身体の中に受け継いでいる。
その結果、一つの魂を持つ人として、生きている。
また一方で、細胞が分裂する際に、ゲノムは変化することが近年の研究で分かっている。生まれた時のゲノムを同じまま一生持ち続けるわけでない。
例えば、音楽家の家系に音楽家が誕生するのは、生まれながらにして、音楽を操るためのシナプスをより太くより多く持っているかもしれないけれど、栄養がきちんと摂取され生物的にも音楽家的にも良い環境が整っていなければ、そのシナプスは途切れる可能性もある。
私が高校生になり初めての部活を楽しんでいると、懇談の時に京大卒の数学科の担任に言われた。「部活は1日何時間ですか?せいぜい2時間程度でしょ?勉強は毎日6時間あります。部活に時間を取るより勉強に時間を使った方が、より将来のために役立つと思いませんか?」
生徒の言葉や気持ちを無視し、数字でしか考えない担任に嫌悪を抱き、数学までもが嫌いになった。高二になると担任も数学の先生も変わり授業を聞くようになったけれど、大学受験を終えると数学から解放され、脳の数学分野の思考回路のネジが外れたように数字を受け付けなくなった。
自分が言ったことは往々にして忘れる。
人から言われ忘れられないことは多々ある。
他人の発する言葉によって、またそれをネガティブに受け止め続ける自分の考え方や生活習慣によって、加えて過去に生きた生物や先祖の生命を部分的に継承していることによって、興奮性や抑制性の神経伝達物質が放たれ、ゲノムが変化し突然何かしらの興味を持ったり失ったり、色んなことができたりできなかったりするのだと思う。
ドイツ人職人の魂がドイツ語学習の手助けをしてくれれば嬉しいけれど、私の人生を乗っ取られているとは思いたくない。