2001年6月12日チューリッヒに到着し、その翌日移民局へ行ってみた。スイスで住んでみたい。でもスイスにはワーホリ制度がない。スイスのビザはどういったものがあるのか、聞くだけ聞いてみようと思った。
ホテルのフロントで移民局の場所を尋ね、地図を確認しながら行った。途中で、通りすがりの人に移民局の場所を尋ねるとすぐそこだよと教えてくれ、別れ際に"Good luck!"と言ってくれた。
移民局の受付で窓口を案内され、自分の呼び出し番号まで待った。本当は、アーティストとして滞在するためのビザがないかを尋ねたかったが、恥ずかしかった。
自分の番号が呼ばれ、スイスのビザについて尋ねると「スイスに住みたければ、就職するかスイス国籍保持者と結婚するかです」と言われた。リアリティバイツ。現実は厳しい。でも私にはドイツでの滞在ビザがある。気を取り直してチューリッヒの駅へ行き、コンスタンツまでの切符を購入した。
次の日コンスタンツに到着してすぐ、駅に隣接する観光案内所で、ホテルの予約ができるか尋ねた。部屋探しに最低でも1週間かかるだろうと、コンスタンツの駅近くのホテルで空き状況を確認すると、その当日1泊だけしか空きがなかった。コンスタンツで数日間のイベントがあり、一週間空きのあるホテルはないという。焦った。が、仕方がない。
駅から離れた郊外の手頃なホテルで空きのある3日後から1週間分の予約を取り、それまでの間は他の街を見てみようと『地球の歩き方』を調べた。何となくシュトゥットガルトへ行くことにした。案内所で対応してくれた若い男性はとても親切で、シュトゥットガルトで2日間滞在するためのホテルを手配してくれた。
シュトゥットガルトは都会の街だった。自動車に興味はなかったが、折角ドイツへ来たからとベンツ博物館へ行った。車体の光沢感を描きたいと思い何枚も写真を撮ったが、未だ、それらの車の絵を描いたことはない。
コンスタンツへ戻り、予約していたホテルへ向かった。駅から約40分間のバスの道のりで目に入る景色すべてが、望んだどおりの自然溢れる風景だった。不安よりも期待が大きく膨れた。
とりあえず1週間滞在することになったホテルの部屋は、ベッドと一人用テーブルがやっと置けるほどの小さな屋根裏部屋だった。
その狭さや、テーブルにかけられたオレンジ色のチェック柄のクロスや、ベッドに横になり屋根のガラス窓から夜空を見た時の気持ちを、20年以上たった今も覚えている。とにかく嬉しかった。早く部屋を見つけて、絵を描きたいと思った。