今から30年程前、3年間勤めた会社を辞め警察官採用試験を受けるために勉強をしていた。
ある日、気分転換のため書店へ行き店内をブラブラしていると、この画集が目に入った。アートに興味はなかった。
この画集を手に取った理由は覚えていないが、当時の様子は今でも鮮明に覚えている。本を開くと写真のような絵が目に入り、「これ、絵?」と思った。そして「え?これ色鉛筆?」と驚いた。
タイトルには「色鉛筆」と書かれてあるが、私の知っている色鉛筆画とは違う。本をペラペラめくると、写真としか思えない絵が何枚も載っている。
本当に色鉛筆?と思い「はじめに」を読むと冒頭に「ええ、これも色鉛筆なんです」と書かれてある。読者心理が読まれていてまた驚いた。
これらの絵は100%色鉛筆で描かれてあり、CPSA国際色鉛筆展覧会に入選した『絵画』と記されている。
CPSA?
色鉛筆の協会?
これ本当に色鉛筆?
どうすればこんな写真みたいな絵が描けるの?
疑問が湧き出てページを何度もめくり、穴の空くほど絵を見続けた。本当に穴が空いてしまうんじゃないかというほど釘付けになった。
本の値段を見ると、3000円。アーティストになりたい訳ではない。私は勉強に集中しなければない。そう言い聞かせて本を置いた。
私が警察官採用試験を受けた年は採用倍率100倍だった。一次試験は受かったが二次試験で落ちた。適性検査問題の「血が恐いですか?」に「はい」を選び、「警察官以外の仕事をするなら、レーサー?それとも花屋?」に「レーサー」を選んだ。選択ミスで不合格になったかどうかは分からない。ただ二次試験に落ちると、再度試験を受けても受かることはないと知り合いの警察官OBから聞いた。
警察官になることは諦め会社勤めをし、週末に絵を描き始めた。大人になって初めて画材店へ行ったが、どの色鉛筆を買えばいいか分からない。アメリカの人達が使ってるから、おそらく外国製の色鉛筆だろうと思い、なんとなく惹かれた色鉛筆を何色か買った。
家にあったL.L.Beanのカタログの写真をモチーフにして絵を描いてみた。が、描いたトートバックや果物の大きさのバランスが悪く、光沢感もなく、写真のような絵にはほど遠い。
なぜツヤツヤに見えないんだ?
専用の色鉛筆があるのか?画用紙が違うのか?
どうすれば写真みたいになるんだ・・?
当時はまだ今のようにインターネットは普及していない。再度書店へ行き画集を見たが、描き方は書かれていない。写真のように描ける技法書も売っていない。
色を使うのは諦め、今度は画集に載っていたモノクロ写真のような人物画を真似て描いてみようと思った。Levi'sのカタログに写ったジェームス・ディーンを描いては消し、消しては描き、画用紙がボロボロになった。
画集を見て衝撃を受け穴の空くほど見ていた時に抱いた興味は、失せた。なんとなく自分にも描けそうと思った根拠ない自信は粉砕した。色鉛筆や画用紙が違うんじゃない、自分に才能がないだけだ。そしてまったく絵を描かなくなった。
4年が経った。でも『アメリカの色鉛筆アート』を見た衝撃は、ずっと頭の片隅に残っていた。画集の巻末に掲載されたアーティストたちの連絡先がずっと気になっていた。
勇気を出し「どんな色鉛筆や画用紙を使っているか、原画を見るにはどうすればいいか」を訊いてみようと思った。画集を買って帰り、気になった絵のアーティスト3人に手紙を書いた。
2025-02-24
1.『アメリカの色鉛筆アート』
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